「美容サロン店販調査2025」サロン専売が信頼を生む時代~「ここでしか買えない」が選ばれる理由~

 

   ホットペッパービューティーアカデミー研究員  田中 公子氏が見る『アイビューティー業界』-第28回 

 

「美容サロン店販調査2025」サロン専売が信頼を生む時代
~「ここでしか買えない」が選ばれる理由~

 

アイビューティーサロンの利用率(1年以内のサロン利用率)は増加傾向にあり、今や約10人に1人が利用しています。(美容センサス2024年上期<アイビューティーサロン編>)さらに20代では21.3%と5人に1人以上の利用となり、定着しつつあるアイビューティーサロン。
まつげ・眉毛という繊細なパーツを扱うからこそ、お客さまの信頼もひときわ大切です。今回の「美容サロン店販調査2025」では、サロン専売品が店販成功のカギになっていることが明らかに。アイビューティーサロンの特徴的な傾向と、それを生かした店販戦略のヒントを紐解いていきましょう。

 

文・作表:田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)

 

<目次>
1.  アイビューティーサロンの店販購入率は高水準
2.  「ここでしか買えないから」選ばれるアイテム
3.  満足度92.5%、使用後の信頼感も高まる
4.  ホームケアへのニーズとプロ提案の重要性
5.  アイビューティーサロンの店販購入は、“来店前”こそ勝負どころ!
6.  「プロからのおすすめ」を体験する場

 

1.   アイビューティーサロンの店販購入率は高水準

 

 

アイビューティーサロンにおける1年以内の店販購入率は20.1%。美容サロンでの店販というと、エステサロンを想起される方も多いかと思いますが、アイビューティーサロンは、エステ、ネイルに次ぐ3位。まつげ美容液やアイブロウコスメなどは、施術と組み合わせることによってさらに効果を発揮する商品も多いため、「続けることが大切」と実感されやすい分野でしょう。

 

 

年代別に見ると、特に30代、40代とまつげの悩みが高まる年代の店販購入率が高いのも特徴的です。この層は、まつげのコシや長さの低下、眉まわりのメイク崩れ、表情の印象の変化など、「若い頃とは違う」という実感がケア需要へとつながっていると考えられます。

逆に、50代以降の層は購入率がやや落ちる傾向にあるため、「この年代にどのような提案をしていくか」は、今後の売上拡大の鍵になるかもしれません。

 

 

さらに、お客様自身も日々のケアが必要であることを認識しています。サロンスタッフから提案される商品に対して高い関心を持っています。「店販購入を検討・意向あり」は76.3%にも達しており、「売れる」環境がすでに整っているともいえるでしょう。あとは“どう提案するか”がポイントになります。

 

2.  「ここでしか買えないから」選ばれるアイテム

 

 

アイビューティーサロンで商品を購入した理由として最も多かったのが、「サロンでしか購入できないから(23.9%)」という声でした。この理由がトップになるのは、調査対象の中でもアイビューティーサロンだけ。これは「限定感」や「プロ専用感」が、商品価値そのものとして捉えられていることを示しているでしょう。

ネット通販やドラッグストアで簡単に手に入らないからこそ、「きちんとしたところで選んで買いたい」という心理が働くのでしょう。高品質なまつげ美容液や施術と連携するホームケアアイテムなどは、“ここだけ”の価値を打ち出すことが強みになります。

 

3.   満足度92.5%、使用後の信頼感も高まる

 

 

「実際に買って満足しているか?」という視点でも、アイビューティーサロンは「とても満足」を回答した人は52.2%で他業種と比べても非常に高い評価を得ています。さらに「とても満足」「まあ満足」の合計では92.5%に達する結果に!

 

 

さらに注目したいのは、「また同じ商品をこのサロンで買いたい」(35.8%)というリピート意欲の高さです。これは、サロンで購入したことによる安心感や、「プロに選んでもらった」という信頼が背景にあります。特に目元のケア商品は効果や安全性への不安がつきまとう分野。だからこそ、一度良い体験をしたお客様は“次も同じ場所で買いたい”と思うのでしょう。

 

 4.   ホームケアへのニーズとプロ提案の重要性

 

 

アイビューティーサロンに通うお客様の“ホームケアに対する意識”は、施術の満足度や再来率だけでなく、店販商品の導入にも大きな影響を与えます。特に今回の調査結果では、「自分にあった商品を知りたい」(41.8%)という声が最も多かったのですが、それはつまりお客さまは「何を使えばいいのか分からない」という“迷い”を抱えているということでしょう。

次いで、「商品を試しに使ってから購入したい」(29.9%)や「サロン取扱商品で、市販品では得られない効果を得たい」(28.4%)という声が続き、いずれも“納得してから買いたい”という慎重な購買姿勢が見て取れます。とくにまつげ美容液やアイブロウコスメは、直接顔に使うアイテムのため、肌や毛質との相性を気にする方が多いのも特徴です。

さらに、「商品購入後にも使い方や疑問点をプロに相談したい」(26.9%)という結果も示すように、購入後も「サロンとつながっていたい」「プロに聞けることが安心」というニーズが根強くあります。これは店販が“売って終わり”ではなく、“提案からフォローまで”を一貫して行うことが求められていることを意味します。

そして最後に見逃せないのが、「なるべく短時間でケアしたい」(25.4%)という現代女性のライフスタイルを反映したニーズです。日々忙しい中でも“手軽に、でもきちんとケアしたい”という要望に応えることで、実用性の高い商品は選ばれやすくなります。

 

5.   アイビューティーサロンの店販購入は、“来店前”こそ勝負どころ! 

 

 

「お客様はどのタイミングで“この商品を買おう”と決めているのか?」——これは店販提案の成功を左右する非常に重要な問いです。アイビューティーサロンの場合、今回の調査結果では、「サロン来店前に、検索サイト(ホットペッパービューティーなど)で商品情報を見て」(37.3%)、「来店以前から購入しようと思っていた」(26.9%)と、多くの方が来店前に購入の意思を固めていることがわかります。

 

これは、他業種に比べても明らかに“来店前”の意思決定比率が高く、特に「検索予約サイトで情報を見た」割合が突出している点が特徴的です。つまり、お客様は施術予約をする段階で、すでに「どんな商品があるのか」「自分に合いそうか」をチェックしている、ということです。

 

この傾向から導き出されるのは、“来店前マーケティング”の重要性です。ホットペッパービューティーなどの予約サイトや公式SNSに、店販商品の情報をしっかり掲載することが、実は売上に直結しているのです。「施術との相性」や「スタッフおすすめコメント」「使用イメージ」が入った紹介文は、お客様の事前検討の助けになるでしょう。

 

また、「カウンセリング中にスタッフと悩みなどの話をして」(23.9%)や、「カウンセリング中に商品説明を聞いて」(22.4%)、「施術中に商品説明を聞いて」(22.4%)と、来店後の対話も引き続き大切なタイミングではありますが、“来店前に決められている割合のほうが高い”という事実は、これまで以上に意識したいポイントです。

 

店販提案は“来てから話す”時代から、“来る前に伝える”時代へ。アイビューティーサロンだからこそ、「事前提案」の仕組みづくりが、これからの成長を大きく左右すると言えるでしょう。

 

6.   店販は、「プロからのおすすめ」を体験する場

 

今回の調査から見えてきたのは、「価格」や「機能性」よりも、「誰がすすめるか」「どこで買えるか」に重きを置く購買行動です。アイビューティー商品は、目に近い部位に使用するものだからこそ、“信頼できる場所で買いたい”という心理が強く働きます。つまり、「サロン専売である」ことが、そのまま安心・信頼の象徴となるのです。顧客は単にモノを買っているのではなく、“プロからの選択”という体験を買っている。この前提に立てば、価格勝負ではなく、信頼と提案をベースにした“価値の伝え方”が重要になると言えるでしょう。

 

 

データ出典:ホットペッパービューティーアカデミー

美容サロン店販調査(2025 年)
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/trade/salon/s_merch/66175/

調査期間:
2025 年 2 月 6 日~2 月 14 日

調査対象:
<スクリーニング調査>全国の15~69歳男女3,300人
<本調査>美容サロン1年以内利用者(美容室、理容室、ネイルサロン、エステサロン、リラクゼーションサロン、アイビューティーサロンのいずれか)2,513人

 

<寄稿>
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。
調査研究員として、「美容センサス」をはじめとした美容サロン利用調査や、美容消費の兆しを発信。
セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。(共著『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか)​