まつげサロンの離職率を下げるには? 「就業実態調査」から読み解く「働きやすさ」と「育成」のヒント

 

   ホットペッパービューティーアカデミー研究員  田中 公子氏が見る『アイビューティー業界』-第27回 

まつげサロンの離職率を下げるには?
「就業実態調査」から読み解く「働きやすさ」と「育成」のヒント

 

働きやすいまつげサロンづくりのヒントが、今年の「美容サロン就業実態調査」の結果から見えてきました。離職率の高さが課題となるまつげサロンですが、「休日の確保」や「数字に強いスタッフ育成」などが改善のヒントになりそうです。
今回は、美容サロン全体の傾向とあわせて、「まつげエクステスタッフ」に特化した課題と可能性を、最新データとともに読み解きます。

 

文・作表:田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)

 

<目次>
1.  美容師の離職率の低下とその背景
2.  まつげエクステスタッフの離職率は依然7割超
3.  「技術」だけじゃない、実は必要とされる新人教育は?
4.  転職市場、転職者のリアル
5.  転職理由から見えるサロン改善のカギは?

 

1.   美容師の離職率の低下とその背景

 

 

美容師の離職率は2025年には45.7%と、ここ5年で最も低い水準となりました。背景には、サロンによる福利厚生の充実や早期スタイリストデビュー制度の導入、若手美容師のキャリア設計支援など、働き方改革の取り組みが進んできたことがあると考えられます。

 

 

美容師が働くうえで重視する項目として、「休日日数」(44.5%)、「仕事とプライベートの両立」(42.0%)がいずれも2年連続で増加しています。特に「休日日数」は前々年比で3.2ポイントの上昇となりました。柔軟なシフト設計や週休2日制の導入などが、いまや採用・定着のカギになっていることがわかります。

 

2.  まつげエクステスタッフの離職率は依然7割超

 

 

まつげエクステスタッフの離職率(その職種に一度就いたが現在は離職している人の割合)は、2025年時点で71.1%。過去数年間大きく改善されておらず、全職種の中でも高い水準です。同じく高離職率なネイリスト(67.9%)と並び、「職場に定着しにくい職種」と言えます。長く働ける環境づくりが、業界として急務です。

 

3.   「技術」だけじゃない、実は必要とされる新人教育は?

 

 

美容サロンスタッフが、新人時代に「学んでおきたかったこと」の第1位は「技術」(49.3%)でしたが、注目すべきは第3位・第6位に挙がった「経営に関する知識(27.8%)」と「売上や数字に対する意識(25.4%)」。

新人スタッフが売上構造や経営の視点を理解することは、働きがいの向上や職場への定着率アップに大きく貢献すると考えられます。

 

 4.   拡大する転職市場、転職者のリアル

 

 

直近1年で同業種に転職した割合は、全体で33.0%と高水準を記録し、転職市場は今も拡大を続けています。

 

 

職種別には美容師と理容師を除くと、ネイリスト(40.3%)やまつげエクステスタッフ(33.1%)は、他職種よりも転職が多い傾向にあります。

もともと転職が多い業界ではありますが、ここ数年でその動きはさらに活発化しており、求職者は「より良い環境」や「成長できる職場」を求めて積極的に動いていることがわかります。

 

5.   転職理由から見えるサロン改善のカギは?

 

 

スタッフが「転職を決めた理由」として最も多かったのは「給与に関する不満」(31.0%)。続いて「拘束時間に不満(22.3%)」「雰囲気が合わない(19.9%)」と続きます。

 

 

さらに注目すべきは、「仕事とプライベートの両立が難しいと感じたから」という理由が2年連続で増加しており、2023年の12.5% → 2024年13.3% → 2025年14.2%と上昇傾向にあります。スタッフがより自分らしく働きながら生活を大切にしたいという意識を強めていることがうかがえます。

このような背景から、給与や労働時間だけでなく、ライフスタイルに寄り添った働き方の設計が、これからのサロン経営において重要なカギとなるでしょう。

 

データ出典:ホットペッパービューティーアカデミー

美容サロン就業実態調査(2025 年)
https://hba.beauty.hotpepper.jp/wp/wp-content/uploads/2025/04/PR_20250424.pdf

調査期間:
<スクリーニング調査>2025 年 1 月 9 日~2 月 14 日
<本調査>2025 年 2 月 17 日~2 月 25 日

調査対象:
<スクリーニング調査>15 歳以上 2 万 295 人
<本調査>美容サロン従事者
3,243 人(美容師:1,089 人/理容師:536 人/ネイリスト:211 人/エステティシャン:500 人/リラクゼーションセラピスト:786 人/まつげエクステスタッフ:121 人)

 

<寄稿>
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。
調査研究員として、「美容センサス」をはじめとした美容サロン利用調査や、美容消費の兆しを発信。
セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。(共著『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか)​