韓国「眉タトゥー」合法化議論 産経新聞が報じる

 

韓国において、美容ショップなどでの「眉タトゥー(入れ墨、アートメーク)」施術は、「無免許の医療行為」にあたるとして違法だが、市場の拡大に伴い規制は空文化しており、法改正を求める運動も活発化していると『産経新聞』が2024年5月2日伝えた。(ソウル=時吉達也記者)

国会議員活用も曖昧対応

皮膚に色素を注入し、眉毛の化粧効果を長持ちさせる施術で日本でも人気がある「眉タトゥー( アートメイク)」の合法化に向けた議論が韓国で広がっている。医師以外による施術は違法とした30年前の最高判例を覆す判決も下級審で出ているが、国会議員は自身の印象改善に施術を積極活用しつつ、一部世論への配慮から法改正には消極的で曖昧な対応に終始している。
「男性政治家の10人中2~3人が眉タトゥーの施術を受けている」。 主要紙の朝鮮日報は政党関係者の話としてこう伝える。

イメージ戦略重視

施術効果が1~2年続き化粧の手間を省くとして、女性を中心に人気だった 眉タトゥーが政界で注目されるようになったのは、2021年頃からだ。 22年大統領選で尹錫悦(ユン・ソンニョル)現大統領と終盤まで争うことになる安哲秀(アンチョルス)氏の”変貌”が大きく、報じられた。 安氏は「品質が100点でも、マーケティングが0点なら(商品評価は)0点になる」と印象改善の必要性を強調した。
韓国メディアで「眉毛3隊長」と呼ばれるのは安氏と革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)代表、洪 準杓(ホン・ジュンピョ)・大邱(テグ)市長の3人。次期大統領候補に名前の上がる大物たちが、イメージ戦略を重視する実態が浮かぶ。
施術業者らで構成される韓国反半久化粧師中央会は、施術を受けた経験があるのは人口の3分の1にあたる 1,700万人と推算し、市場規模は3兆ウォン(約3400億円)としている。
しかし、厳密には大半の施術が違法行為に分類される。韓国最高裁は1992年、医師以外の施術は「無免許の医療行為」にあたると判断。 違反すれば5年以下の懲役や5千万ウォン以下の罰金が科せられるが、2019年の政府機関調査によると、施術は主に医師不在の美容ショップ(44.3%)などで実施され、医療機関(13.1%)でも医師が担当しないケースが大半だという。
同中央会の尹日香(ユンイルヒャン)会長は「デザインが気に入らなかった利用客が『違法行為を告発する』と脅迫して料金の払い戻しを求めるケースもある。 合法化を通じて施術者の保護をする必要がある」と訴える。

新たな司法判断も

法規制が現実と乖離する中、新たな司法判断も出ている。 釜山地裁は去年12月、眉タトゥーをめぐる医療法違反事件の1審判決で、最高裁判決から30年を経て「施術が爆発的に増加し社会の認識が変化した」と指摘。 技術発達に伴う危険性の低下などを挙げ無罪を宣告した。 8月にも別の同種事件が2審無罪となっており、最高裁で判決が変更されるか注目を集める。
一方、立法府では議論が停滞する。国会の多数派を構成する共に民主党の李代表は自身が出馬した22年大統領戦で、医師以外によるタトゥー施術を合法化すると公約に掲げた。しかし、2年が経過した今も公聴会が時折り開かれる程度だ。 同党関係者は「眉の施術に加え、いわゆる『入れ墨』まで合法とすべきか、世論や支持者の間で議論がある。(4月の)総選挙前に扱うのが難しいテーマだった」と漏らす。