まつ毛美容液に対する国民生活センターの取りまとめと、厚生労働省の通達について

アイビューティーサロンにおけるまつ毛パーマ(カール)の施術比率が約7割となり、自まつ毛のケアが一段と高まっている。それに相まって、最近まつ毛美容液の新商品が各社より続々と発表されている。

令和元年8月8日に国民生活センターより『まつ毛美容液による危害が急増!-効能等表示の調査もあわせて実施-』が取りまとめられ、それを受けて厚生労働省が各都道府県へ通達した。
消費者とのトラブルを防ぐためにも是非再認識してほしい。以下公表内容である。

 

まつ毛美容液による危害が急増!-効能等表示の調査もあわせて実施-【国民生活センター 令和元年8月8日】

PIO-NET(注1)には、まつ毛にはり、こし、つやを与える等の効能をうたう美容液(以下、「まつ毛美容液」とします。)を使用して目の周りが腫れたなどの危害(注2)を受けたという相談が、2015年度以降381件(注3)寄せられています(図.危害件数の推移)。特に2018年度に急増しており、中には、眼科医で角膜潰瘍の診断を受けたという事例もありました。

また、インターネットショッピングモールにおいて調べたところ、頭髪への使用を想定して医薬部外品として承認された育毛剤(養毛剤)(注4)(以下、「育毛剤」とします。)が、まつ毛美容液として販売されているものもありました。その他にも、化粧品の効能として表示される範囲を超えると考えられる「育毛」「発毛を促す」など、育毛の効能効果を期待させるような表示がなされたまつ毛美容液が販売されていました。

そこで、まつ毛美容液に関する相談情報と、表示等を調べ、消費者トラブルの未然防止・拡大防止のため、消費者に情報提供するとともに、関係機関への要望及び情報提供を行うこととしました。

 

(図.危害件数の推移)

2015年度の危害件数は8件、2016年度の危害件数は18件、2017年度の危害件数は70件、2018年度の危害件数は281件、2019年度の危害件数は4件です。

(注1)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースのこと。
(注2)PIO-NETにおける危害とは、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けた相談を指す。本資料におけるPIO-NET情報の件数及び事例に関する年代別、性別は、危害を受けた者のもの。
(注3)「化粧品」に関する危害情報のうち、「まつげ」「まつ毛」「マツゲ」「マツ毛」「睫」という文字列を含む相談であり、かつ「美容液」「育毛液」「育毛剤」「養毛液」「養毛剤」「増毛液」「増毛剤」「栄養液」「栄養剤」「クリーム」「トリートメント」という文字列を含む相談。2019年5月31日までの登録分。
(注4)医薬部外品の育毛剤(養毛剤)は、脱毛の防止及び育毛を目的とする外用剤として、育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛の効能効果について承認を受けたもの。

 

まつ毛美容液について

まつ毛美容液は、マスカラのようにブラシやチップ(スポンジ状のもの)、あるいは手で直接、まつ毛の生え際等に塗布する商品で、はり、こし、つやを与える等の効能をうたっているもののほか、育毛の効能効果等をうたっているものもみられます。

その一方で、化粧品では、医薬品等適正広告基準(注5)により毛髪にはり、こし、つやを与える等の効能をうたうことができますが、まつ毛の育毛の効能効果をうたうことは認められていないと考えられます。また、現時点(2019年7月末時点)では医薬部外品として承認されたまつ毛美容液はありません。

インターネットショッピングモールで販売されている20銘柄(注6)の成分表示を調べると、9~57成分が表示されていました。20銘柄全てに、オタネニンジン根エキス、ナツメ果実エキス、センブリエキスなど様々な植物由来の成分が表示されており、そのうち、一部の銘柄にはエタノールなどのアルコール類が成分として表示されていました。

(注5)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「医薬品医療機器等法」とします。)における医薬品等の広告規制に関する基準として設けられたもの。本公表に関連する部分は報告書本文9.参考資料(1)のとおり。
(注6)20銘柄の選定方法については「表示の調査」に記載。

 

相談情報の概要

PIO-NETには、「まつ毛美容液」に関する相談が2015年度以降(2019年5月31日までの登録分)で2,140件寄せられています。インターネット通販による定期購入の契約に関する相談など「契約・解約」1,897件(88.6%)や「販売方法」1,597件(74.6%)に関する相談が多いものの、次いで、「表示・広告」に関する相談が482件(22.5%)、「品質・機能、役務品質」に関する相談が408件(19.1%)、「安全・衛生」に関する相談が397件(18.6%)寄せられています。

「まつ毛美容液」に関する相談のうち、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けたという相談(危害情報)は、381件寄せられています。年代別(n=360)に集計すると、40歳代~60歳代が全体の約8割を占めています。また、事故発生月(n=139)は、11月から2月が86件で冬場の乾燥時期が6割を占めていました。

主な事例
【事例】眼科医師の診断を受けたところ、角膜潰瘍を起こしており手術を要した。
【事例】目の周りが腫れて皮膚科を受診し解約を申し出たが、通常価格との差額を請求された。
【事例】まつ毛を長く濃くするという美容液に効果がなく、目の周りも腫れてきている。
【事例】目のかゆみやまつ毛が抜ける等の症状が現れたが、解約の電話がつながらない。

 

専門家からのコメント

顔や頭皮の部位によって皮膚の構造は大きく異なります。特にまぶたなど、目の周りは皮膚が薄く外界から物質が経皮吸収される率が最も高い部位となっています。また皮脂分泌能力は通常年齢と共に減少し40歳代を過ぎると洗顔後の皮脂分泌回復力が衰えてきます。特に秋から春にかけて乾燥する時期は刺激等の影響を受けやすく眼周囲のトラブルが多くなるようです。そのため、多くの成分が含まれる医薬部外品の育毛剤や化粧品のまつ毛美容液を使用すると、使用者の体質や、使用時期によっては、刺激またはアレルギーによる赤み、かゆみ、痛み、腫れ等が生じることがあります。特に、植物由来の成分やエタノールなどのアルコール類は、使用部位による刺激・アレルギー反応を起こし易いと考えられます。

 

表示の調査

インターネットショッピングモールで「まつ毛美容液」が分類されるカテゴリにおいて、売れ筋ランキングの高い商品、“発毛”、“育毛”、“養毛”及び“増毛”の検索ワードで検索して表示された回数の多い商品、または「医薬部外品」あるいは「薬用」の表示が確認できた商品など20銘柄について、製造者または販売者のウェブサイト、商品本体、パッケージ及び取扱説明書等の表示の調査をしました(調査期間:2019年5月10日~7月23日)。

■20銘柄中、5銘柄は「医薬部外品」や「薬用」の表示がありました。残りの15銘柄は化粧品のものでした。

■医薬部外品の育毛剤はこれまで頭髪用のものはありましたが、今回の5銘柄については、まつ毛の育毛の効能効果に関する表示がなされた医薬部外品の育毛剤でした。また、化粧品の15銘柄中約半数の銘柄にまつ毛の育毛の効能効果に関する表示など医薬品等適正広告基準における化粧品の効能の範囲を超えると考えられる表示がありました。これらは医薬品医療機器等法上問題となるおそれがある表示と考えられました。

■インターネットショッピングモールで、5銘柄の医薬部外品の育毛剤がまつ毛美容液が分類されるカテゴリで販売されていました。

 

消費者へのアドバイス

まぶたが腫れるなどの危害情報が多く寄せられ、その中には期待した効能効果があらわれなかったという相談もあります。購入・契約については慎重に検討しましょう。
肌に赤み、かゆみ、痛み、腫れなどの異常や、目に痛みや違和感があらわれたときには、ただちに使用を中止して、症状の程度によっては皮膚科医や眼科医を受診しましょう。
医薬部外品の育毛剤は頭髪用のものであり、まつ毛への効能効果が承認されたものではないので、まつ毛に使用しないようにしましょう。

 

業界・事業者への要望

まつ毛美容液について、危害情報を含め多くの相談が寄せられているため、安全な商品作りと安心な取引ができるよう業界として対応することを要望します。
医薬部外品の育毛剤について、まつ毛の育毛の効能効果に関する表示をしないよう要望します。
まつ毛美容液について、医薬品等適正広告基準の化粧品の効能の範囲を超える表示がなされないよう要望します。
インターネットショッピングモール運営事業者への協力依頼
医薬部外品の育毛剤がまつ毛美容液として販売されていましたので、出品者の指導及び適切な管理の協力を依頼します。
行政への要望
まつ毛美容液の効能について適切な表示がなされるよう実態把握のうえ、事業者への指導等を要望します。

要望先
厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課(法人番号6000012070001)
日本化粧品工業連合会(法人番号1700150005132)

協力依頼先
アマゾンジャパン合同会社(法人番号3040001028447)
ヤフー株式会社(法人番号4010401039979)
楽天株式会社(法人番号9010701020592)

情報提供先
消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
公益社団法人日本眼科医会(法人番号4010405010572)
公益社団法人日本通信販売協会(法人番号9010005018680)
一般社団法人SSCI-Net(皮膚安全性症例情報ネット)(法人番号8180005016710)
日本チェーンドラッグストア協会(法人番号なし)

 詳細な内容につきましては以下ご確認ください
まつ毛美容液による危害が急増! (kokusen.go.jp)

 

まつ毛美容液を標榜する化粧品等の安全性確保について【厚生労働省 令和元年8月8日】