「アイビューティー」のサービスはいかにして広がり、今に至るのか

日本の「まつ毛エクステ」はもともとエステサロンが広めた!

最近特に人気となり拡大を続けているのは「まつ毛エクステ」や「まつ毛カール」を専門に提供する「アイラッシュサロン」である。実をいうと、「まつ毛エクステ」、「まつ毛カール(まつ毛パーマ)」、「アートメイク」といった「アイビューティ」のサービスは、もともとエステティックサロンで盛んにおこなわれていたメニューである。

 

今から十九年前の二〇〇一年三月に、経済産業省商務情報政策局サービス産業課が調査発表した「エステティックサロン業の実態に関する調査」の「エステティックサロンで行われている施術サービス」によると、「まつ毛パーマ四十三・四%」、「アートメイク十二・七%」、「植えまつ毛(まつ毛エクステ)七・三%」となっており、エステティックサロンでは、アイビューティに関するメニューを積極的に実施していたことが示されている。特に「まつ毛パーマ」においては、約半数近くのエステティックサロンが普通に施術していたことになる。

 

まつ毛エクステの施術において美容師免許が必要となった経緯

「アートメイク」に関しては、二〇〇一年十一月の厚生労働省医事課による医師法違反の疑いがあるという通知により施術中止に。そして「まつ毛パーマ」に関しては、二〇〇四年の厚生労働省健康政策局指導課によるパーマ液の目的外使用にあたるという通知のため施術中止に。「まつ毛エクステ」に関しては、二〇〇八年の厚生労働省健康政策局生活衛生課が美容師法による美容に該当する施術であるという通知が出て、施術を行うには美容師免許を有するということになった。

 

「アートメイク」、「まつ毛パーマ」、「まつ毛エクステ」の施術が、このような結果になったのは、いずれも未熟な技術者による消費者危害が、国民生活センターに苦情として相談され、それが社会問題化し、行政指導が入り施術中止に追い込まれたという経緯になる。それまで全く問題ない営業メニューとして行っていたエステティックサロンにしてみれば、教育や技術を疎かにしたまま施術させた一部の経営者と未熟な技術者が起こしたトラブルとはいえ、それによって業界全体の施術が禁止されたわけで、まさに青天の霹靂といった出来事であった。

 

特に「まつ毛エクステ」に関しては、二〇〇八年、東京都の消費者相談を管轄する東京都生活文化スポーツ局が、「まつ毛エクステ」によるトラブル(粗悪な接着剤によるものが大半)をまとめ「まつ毛エクステによる危害防止の徹底」という要望書を、厚生労働省健康局生活衛生課に提出。これを受けた厚生労働省健康局生活衛生課長が、二〇〇八年三月、全国の保健所などに「まつ毛エクステによる危害防止の徹底について」と題する通知を行った。この通知の中に「まつ毛エクステは、美容師法に基づく美容に該当するものである」という文章があり、それ以降、「まつ毛エクステ」の施術は、美容師の免許が必要とされることになった。たった一枚の通知文書でそれが決まってしまったのである。